誰よりも近くで笑顔が見たい
「ちげーよ。やるから、もうふくれんな」


そう言って、上原くんが杉本くんにお菓子を渡す。


それを受け取った杉本くんは、目をキラキラさせて笑った。


「サンキュ!この借り、いつか返す」


「大げさ。これって、もう一つとったら、貰えるんすか?」


おじさんに向き直って、上原くんが聞く。


「おう!取れた分だけ持ってきな!」


そう言って、おじさんは軽快に笑った。


上原くんが次に狙いを定めたのは、クリップ型の髪飾り。


淡いピンクに透明の飾りが揺れてる。


お祭りの景品とは、思えないほど綺麗で可愛い。


上原くんは、それを簡単に打ち落としてしまった。


「お兄ちゃん、上手だね。好きな人へのプレゼントかい?」


おじさんのからかうような言葉に上原くんは、照れたように笑った。
< 48 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop