誰よりも近くで笑顔が見たい
「嘘でこんなこと、言わない」


口調も、いつもの敬語じゃない。


いつもの話し方に戻るくらい、真剣なんだ。


「私も、好き。上原くんが、好きです」


私も、真っ直ぐに上原くんを見て、言った。


それを見て、聞いて、上原くんは優しく笑った。


「じゃあ、俺と付き合ってもらえませんか?」


「はい。お願い、します」


私も、笑顔でそう言った。


その直後、大きな音とともにあたりが明るくなった。


花火、上がったんだ。


「綺麗、だね」


髪飾りをさしながら、そうつぶやく。


恋なんて、もうできないと思ってた。


この恋は、実らないと思ってた。


伝えるつもりも、なかった。


「行こ」


花火が終わって、その言葉とともに手を握られる。


恋人繋ぎ。


「怖い、っすか?」


私は、首を横に振って少しだけ微笑んだ。


全然、怖くない。


むしろ、こうやって手を繋いでいられるのが幸せ。
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