誰よりも近くで笑顔が見たい
「遠い、か。そうだな」


敬語じゃない、普通の話し方に顔をあげる。


「うん」


「努力、する。敬語にならないように」


「うん」


ちゃんと、伝わった。


それが嬉しくて、笑顔になる。


「……っ。行こ」


そう言うと、上原くんは私に手のひらを差し出す。


「え?」


「恋人っぽくない、なんて、俺も言われたくない」


気にしてるの、私だけじゃなかったんだ。


「うん」


そう言いながら、上原くんの手に自分の手を重ねる。


「あ、そうだ。高坂さんの声、届いた」


声……?


「がんばれって、ちゃんと、聞こえた」


上原くんが少し恥ずかしそうに言う。


「うん。よかった……」


あんな声でも、上原くんに届くなら、もっと、もっと応援したい。


もっと、話したい。


夕焼けの空と、雲。


沈みかけの太陽が作り出す長い影は、2つ。


手が重なってる。
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