誰よりも近くで笑顔が見たい
これで、なのちゃんに助けられるのは何回目だろう。


今日だけで何回なのちゃんに迷惑かけたかな。


息を吐き出すと、看板をかかげる。


いつもより賑やかな校門近くを歩く。


なのちゃん、早く帰ってこないかな。


そう思いながらいると、知らない男の人に腕を掴まれる。


「ねえ、案内してくれない?」


また、か……。


俯いて、ダメという意思を示す。


「ほら、行こ」


「やっ……」


そう言うと、誰かに後ろから抱きしめられた。


……上原くん?


上原くんと似た、優しい香りがする。


「嫌がってるでしょ?やめなよ」


違う、上原くんじゃない。


「彼氏持ちかよ」


その人は、そう吐き捨てるとどこかへ行ってしまった。


「君、言わなきゃ。ちゃんと」


腕から解放されたと思ったら、注意される。
< 82 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop