誰よりも近くで笑顔が見たい
「ごめん、なさい」


いつもは、絶対にしないのにその人を見上げてしまう。


茶色く染められた髪、ピアス穴が見える。


「今度からは、気をつけなよ。じゃ」


その人は、片手を上げて私たちの元を去って行った。


「蘭、無事?」


呆然としているとなのちゃんが心配そうに私の顔を覗き込む。


「大、丈夫」


「そっか。よかった」


安心したように息をついたなのちゃんに少し笑う。


すると、なのちゃんは驚いた顔をして私をみた。


「蘭、よく笑うようになったね」


すぐに優しい声が降りてくる。


「そう……?」


自覚は、ない。


「上原くんと出会ってから、表情豊かになったね」


そう、なのかな。


でも、前より学校が楽しい。


全部、上原くんと出会ったから。
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