誰よりも近くで笑顔が見たい
なんとなく恥ずかしくなって、俯いた。


「あ、照れてる」


笑ったなのちゃんに私も少しだけ笑う。


そういえば、あの男の人、お礼言い忘れちゃったな。


同じ学校みたいだし、また会えるかな。


そう思いながら、なのちゃんと呼び込みをする。


声をかけられることは、少なくなかったけどなのちゃんがその度に助けてくれた。


「よし、文化祭、一緒にまわろっか」


シフトが終わって、午後からは特にやることもない。


上原くんとも約束できなかった。


言い出せなかった。


「本当は、上原くんとまわりたかった?」


なのちゃんに聞かれて、身体がビクッとはねる。


「ふふっ。わかりやすいなあ」


嬉しそうに笑ったなのちゃんは、そのまま歩く。


「ほんと、蘭がちゃんと恋できてよかった」
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