プラチナー2nd-
「どうぞ。もうクリスのものよ」
紙袋から大きな手のひらに転がり出てきたのは、トップでXの形にクロスするシルバーの指輪。まだ若いし、こういうゴツいアクセサリーは好きなんじゃないかなと思ったのだ。案の定、
「ええっ、すげえカッコいい。これ、本当にもらっちゃって良いんですか? っていうか、俺、何にも返せないです」
と、興奮した様子だ。
返せない、とクリスは言うけれど、紗子はもう彼からもらっている。こんなに穏やかに笑っていられるのは、クリスが隣にいるからだ。浜嶋に向かう気持ちとも違う、勿論和久田に向く気持ちとも違う、穏やかな気持ち。それを教えてくれただけで充分なのだ。
嵌めてもいいですか、と聞かれたので、エエよと応える。指輪はクリスの中指にするりと収まった。手を空にかざして指輪を見ているクリスが笑う。
「カッコいい…」
「似合うわね。良かった」
「ホントに? 似合ってますか?」
クリスが紗子を見て言うので、似合ってるわよ、と言うと、クリスがにこお、と笑って、宝物にしよ、と呟いた。
「言うとくけど、安ものよ?」
「違うんですよ。紗子さんからもらったって言うのが宝物なんです」
ほっぺたのてっぺんを紅潮させて言うクリスが愛らしい。浮足立ったクリスを紗子は早足で追った。