プラチナー2nd-
会社の最寄り駅から徒歩で十五分程歩いた先の、ビルの一階に紗子たちは来ていた。このビルには紗子の会社のほかにいくつもの会社が入っていて、その一階にあるコーヒーショップは一般にも開放しているからそこそこ人が居た。
「さっきお茶したばっかりだけど、雰囲気楽しんでみる?」
そう提案してみると、クリスが、良いんですか!? と喜んだので、二人分のコーヒーを頼み、マグカップを持ってテーブルに向かい合わせで腰掛けた。
ショッピング帰りと思しき女性客もいたりするが、休日出勤なのか、奥のテーブルではノートパソコンを見ながら打ち合わせが行われていたし、コーヒーを味わえているのか分からない様子で資料をにらんでいる人も居る。先刻まで饒舌だったクリスもなんだか小声になる。
「すごい…。本当に会社だ……」
「だからそう言ったじゃない」
首を竦めてきょろきょろするクリスに苦笑が漏れる。こういうところは学生だな、と思った。
「就職活動で会社訪問とかするようになると、こういうところも慣れてくわよ。クリスもきっと……」
「紗子じゃん」
話している途中で不意に呼ばれて誰かと思った。ジャケットこそ羽織っていないが、ネクタイを締めた和久田が事務ファイルを持って現れた。
「なにその恰好。今日お前、休みだろ。わざわざ此処まで何しに来たの」
会いに来て欲しいと思った時は会いに来ないくせに、こういう時に会うなんてタイミングが悪い。