プラチナー2nd-
その気になんて
月曜日の業後、パソコンに向き合っていると、パーティションの間から和久田がデザイン部に入ってきて紗子にちょっと付き合え、と言ってきた。今日一日そのことで胃が痛かったから、紗子はパソコンを閉じて和久田を追った。
何時もの倉庫室の前。後からついて行った紗子にくるりと和久田が向き直り、二人が対峙する形になる。どきんどきんと心臓が痛い。なんでこんなに痛い思いをしなきゃいけないんだろう。和久田が何も言ってこなかったのが悪いのに……。
「土曜日のことだけど」
不機嫌を隠さない和久田が紗子を問い詰める。
「なんで俺が居るのに、お前の恋人になりたい奴と一緒に居たわけ?」
「……『俺が居る』、って、なに?」
ぽつりと言った紗子の返答に、和久田は は? と分かっていない様子だった。
「確かに和久田くんのこと好きって言ったけど、でもあの時和久田くん、それ以上なんも言わなかったじゃない。それなのに、恋人面とか、しないでよ……」
「はあ? お前、何言ってんの? あの流れだったら両思いで万々歳ってことやん」
そう、万々歳だ。でもそれ以上何もなかった。
「そうよ。私も初めて気持ちが通じたって思って嬉しかった。でも和久田くん、あの時好きってこと以上、言わなかったじゃない」
紗子の言い分に、和久田の左の眉が吊り上がる。そしてやっぱり和久田の口から出た言葉は紗子が欲しい言葉じゃなかった。