プラチナー2nd-

ふりだしにもどる

かくして紗子たちのお付き合いは始まった。

……、と思う。

何故「思う」なのかと言うと、あれ以来和久田に会っていないからだ。姿を見ないとかではないのだけれど(今日も後姿だけは見た)、喋ることが出来ていない。当然一緒に行動することもないし、一緒に帰ることもない。だから、お付き合いが『始まった』のか、紗子には分からない。

……何分、初めてのお付き合いなので、どういう手順を踏んでみんなが告白から『お付き合い』に発展しているのか知らないのだ。

っていうか、まずは「付き合おう」の一言から始まるもんじゃないの? 過去に読んだ恋愛小説だって、『僕と付き合ってください』という言葉が必ずあった。紗子は和久田に「恋が成就した気持ち」は問われたけど、「付き合おう」とは言われていない。言われてないんだから、まだ付き合ってはいない。

……なーんだ、そうか。

そうかと分かって、じゃあどうしたらいいのか分からない。

自分から言う? えっ?

(無理無理無理!)

その図を想像しただけで身体が動かなくなる。きっと頭なんて働かなくて、和久田の部屋で目覚めた時くらい、パニックになる。

紗子は考えた。

……自分から行動するのは無理。紗子は『捕まった』方なのだから、『捕まえた』和久田が言うべきだ。そうだそうだ。

そう結論付けて、一旦問題は解決した。兎に角、和久田が何か言ってくるまで、紗子は何も言わないし、何も動かない。それが一番だ。

解決してしまうと、なんてことない。以前に戻れば良いだけのこと。簡単だ。

……なーんだ、そうか。

簡単なこと。紗子は少し肩を落として頭を仕事に切り替えた。


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