プラチナー2nd-
「あれ以上、なんか言わなきゃいけなかったのか?」
和久田がこうも言わないと、逆に察しなかった紗子が悪いのかと思ってしまう。でも紗子は言葉にして欲しかったし、それに大切な、初めて想いが通じた恋だったから、なおさら言葉が欲しかった。
「もういい。言ってくれないんだったら、始まらないだけだし」
これ以上欲しがっても和久田から言葉はもらえなさそうだから、話していても無駄だ。思えばアプローチされているときに好きだという言葉は聞いたけど、告白の時に好きだと言われたわけではなかった。なんとなく通じたと思っていた想いは、やっぱりちゃんと言葉で心に刻みたい。
「言わない言わないってなんなんだよ」
和久田も紗子の態度にますます機嫌を損ねる。それでも紗子は言葉を大事にしたいし、その力を信じている。和久田がひと言紗子にくれたら紗子は喜んで頷くのに、それもしないなんて、和久田はきっと紗子を大事にしていないんだろう。紗子はそう思った。
「もういい。和久田くんと話しててもなんにも解決にならない」
紗子はそう言って、和久田を置き去りにして席に戻った。なんだよ、と苛立った声で和久田が叫んだのが背中に聞こえた。……恋が成就したはずなのに、こんな苦い気持ちになるなんて想いもしなかった……。