プラチナー2nd-
それでも、和久田と話してぎすぎすした気持ちになったので、クリスと話をして朗らかな気持ちになりたかった。それは嘘じゃない。クリスは紗子に安心感とやさしさをくれる。それは紗子にとって大事なことだった。

「クリスの指輪、紗子ちゃんが贈ったんだってね」

山脇がやわらかい声で言う。

「あ、そうなんです。土曜日に買い物に行ったら、ちょうど入ったショップで似合いそうなのがあったので、記念にと思って」

紗子の言葉に山脇は微笑むと、でもあまり思わせぶりなことはしちゃ駄目だよ、と紗子に釘を刺した。

「紗子ちゃんがクリスの気持ちに応えられるなら良いけど、君は浜嶋くんのことが好きだっただろ?」

紗子は山脇の言葉に視線を俯けた。……思わせぶりなことに、なるのかな。単に、一緒に居て楽しかったから記念にって思っただけなんだけど。

「それでもだね。恋をする側からしたら、相手の一挙手一投足にあれこれ理由を考えるから」

山脇は口許に笑みを絶やさない。浜嶋を想っていた頃を思い出す。確かに浜嶋のひと言にさえ、喜び、悲しみ、切なく泣いていた。あの気持ちをクリスに味わわせるのは申し訳ない。紗子は山脇に向けて、はい、と返事をして出されたお冷に口を付けた。


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