プラチナー2nd-


和久田のことを考えていたら疲れてしまった。こういう時は美味しいご飯が食べたい。紗子はまた『ア・コード』に足を向けた。

相変わらず店内は賑わっているようだった。店の入り口の木の扉に手を掛けたところで、店の入っている建物と、隣のビルとの間の路地から何か人が言い合っているような声が聞こえた。

……こんなところで喧嘩?

そう思ってそっと路地を覗いてみると、其処には白いエプロンをしたクリスとスーツ姿の和久田が居た。

(え……っ。何話してるの……)

組み合わせが組み合わせだけに、紗子は手に冷や汗を握ってしまう。耳を澄ませると、都会の喧騒の中に二人の声が聞こえてきた。

「だからって人の恋人誘うのはどうかと思うけど?」

これは和久田の声。そしてクリスも負けていない。

「でも、お誘いしたら頷いてくれました。浜嶋さんのことお好きなのかなって気が付いていましたけど、紗子さんが初めておひとりで店に来られたので、チャンスなのかなって思ったんです。和久田さんのことは紗子さんの口からは聞きませんでした」

クリスにさえ浜嶋に想いを寄せていたことを知られていた。顔から火が吹き出しそうな恥ずかしさだった。

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