プラチナー2nd-
ひとしきり泣いてしまうと、紗子も落ち着くことが出来た。和久田が告白の後から『お付き合い』が始まっていたと認識していたのはびっくりしたが……。

こんな些細なことでもすれ違ってしまうのだから、やっぱり言葉にしてもらわないと分からない。そして涙が落ち着いてしまうと、さっきまで痛かった心臓はどきんどきんと走り出した。

これは経験したことがある。好きな相手を前に、どうしたら良いか分からなくなる時だ。クリスと居るときにはこんな風にならなかった。浜嶋を前にしてもときめきとと切なさが入り乱れていたので、どきんどきんだけの時って、もしかすると初めてかもしれない。

どきんどきんどきん。今まで好きになった人を前にした時とは違う、ふわっと心が浮き上がるような夢のような幸福感じゃなくって、焦りにも似た感覚。一刻も早く此処から逃げ出したいような、もっと一緒に居たいような……。

顔が熱くなるのを感じる。和久田を見てたはずの視線を合わせていられない。再び俯いて膝の上で握った手を見つめる。

あのさ、と和久田が口を開いた。

「松下が言葉を欲しかるの、分かってなくてごめん……。最初は『なんでわかんねーんだ』って思ってた。でもそうだな、松下には初めてのことだもんな。俺の配慮が足りなかったわ、ごめん」

紗子の涙で我に返った和久田が言う。ごめん、なんて謝られると、紗子の方こそ悪かったと思えてしまうじゃないか。でも、違う境遇で生きてきた二人の人間が話をしようと言うのだから、説明は不可欠だ。特に恋愛に関して、紗子には圧倒的に実践知識が足りない。和久田はそれを理解して、こう言ってくれた。

< 28 / 32 >

この作品をシェア

pagetop