プラチナー2nd-
定時になって机上を片付けるついでにパーティションの向こうを窺い見ると、丁度明るい茶色の頭が通路を曲がってきていた。
……こっちに来るのかな。
そう思って心臓が早く打ち始めた時に、隣から声を掛けられた。
「松下」
振り向くと浜嶋主任が隣の席に座った。なんの用だろう。主任の方を向かざるを得なくて、態勢を変える。椅子を回して浜嶋に向き直ると、浜嶋が手に持っていた書類を紗子に示して見せた。
「これだけどな……」
紗子は主任の言葉に耳を傾けた。
*
主任に指摘された書類のデータミスを直していたら、また少し遅くなってしまった。相変わらず浜嶋主任は残業する部下を残しては帰らない。紗子がパソコンを閉じると、主任が机を離れて紗子のところに来た。
「直ったか」
「はい。送る前に教えて下さってありがとうございます」
紗子が言うと、浜嶋が笑った。
「そのために俺たちが居るんだろう、何言ってるだ」
ぽんぽんとやさしく頭を撫でられる。そして、帰るぞ、と言われて紗子は荷物をまとめた。主任も席から鞄を持ってくる。
「飯食ってないだろう。食いに行くか」
浜嶋からの誘いを断る理由はなかった。にこやかに、はい、と返事をすると先を行く浜嶋の後を追って職場を出た。