プラチナー2nd-
「荒れてるわねー」
「荒れてない」
詩織が財布を持ってきていたので、紗子もデータをセーブすると財布を取り出して自販機コーナーまで休憩がてら歩く。
廊下の突き当りに設置されている自販機コーナーは十五時と言うこともあって賑わっていた。二人も小銭を投入口に入れてボタンを押す。
ガコン、と音をさせて出てきた缶を持ってその場でソファに座ると、缶のプルを引き、ひと口コーヒーを飲んだ詩織が口を開いた。
「この前、和久田くんと付き合うことになったって言ってきてたじゃない。早速喧嘩?」
紗子も缶ボトルのオレンジジュースをひと口飲むと、仏頂面で、それ訂正、と詩織に言った。
「訂正?」
「そう。だって私、和久田くんになにも言われてないもん」
「なにも、って?」
理由が分かっていなさそうな詩織に説明するのは少し恥ずかしい。
「だから、付き合おうとか、言われてないもん、私」
紗子の言葉に、詩織がびっくりした顔をした。