優しい『君』とおちていく

「俺さ、リハビリ頑張るから、唯愛も頑張ろ?」


『頑張る』という言葉が嫌いだった私。

だけど七瀬の『頑張る』は勇気が出る。


「うん!」


「でも、もし嫌なことがあったら逃げていいよ。俺が逃げ場を作ってあげるから。」


ほら、こうやって『ムリしないでいいよ』って言ってくれるもん。


「ありがとう。」


七瀬がいないとダメになっちゃったな……


「……七瀬は悩みとかないの?」


「んー、まあ、ないかな。だって家にも居場所が出来たし。」


あっ、そういえば。


「夏休み明けたくらいから学校行っていいよ。私、頑張るし。」


七瀬に迷惑ばかりかけてはいられない。


「俺が唯愛の学校に転入すれば一石二鳥じゃない?」


……えっ。

放課とか会えるのはうれしいんだけどさ。


「……七瀬って頭いいじゃん。わざわざ悪い所に行かなくても。」


「え~、唯愛は会いたくないの?同じ学校じゃ嫌なの?」


無意識なのか、わざとなのか。

たぶん七瀬は後者だろう。


「……嫌、じゃない。」


七瀬の将来に関わることだよ。

……そんな簡単に決めないでよ。


「俺が好きでこっち選択してるから。」


そう言われると返しようがない。


「……うん。」


まあこれも、優しさの1つ。


「んー、じゃあ決定ー。」


何事でもないような顔をして七瀬は言う。


「明日から、頑張る?」


「……うん。」


最初は少しずつでもいい。

最終的には大きな力になる。

頑張れ、私―――
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