優しい『君』とおちていく
「竹くん、優しかったでしょ?」
「……うん。俺ほんと最悪だなぁ……」
最悪なんかじゃないよ。
「七瀬は、言葉で表しようのない、すごい人なんだよ!」
だからそんな悩みもぶっ飛んじゃえ!って。
「……ありがとね。」
「まあでも、七瀬の良さは七瀬が分かってなくても、私が知ってたらいいし。」
なんなら、私だけがいいし。
「唯愛の可愛さは俺だけが知ってればいいのに……」
「……私、かわいくないよ?」
七瀬はそんなとこも可愛い、って頭撫でてきた。
『そんなとこ』ってどんなとこ?
「私ね、雨の日に七瀬に出会ったのは偶然じゃなくて必然だと思ってるよ。」
お母さん、お父さんと言い合いして。
物扱いされて外に出て。
雨が降ってたのにも関わらず公園に行って。
運命とか信じてなかったけど、これが運命だと言える。
「俺も。唯愛と出会えて変われた。あの日を作ってくれたみんなに感謝しかないよ。」
七瀬だってそう言ってくれて。
「今更かもしれないけど、その人たちに感謝を伝えたい!」
「でもどうやって伝える?」
それはね。
「叫ぼう!せ~の……」
黒かった世界がある人のおかげで、透明になって。
そんなことは夢物語かもしれない。
でも、信じて生きていきたい。
辛く苦しくなったときに、信じてきたことが希望の光になるはずだから。