料理男子、恋をする
「え…っ!? ええ……っ!?」
驚いた様子の薫子が、街灯に照らされた頬を紅くする。ポケットの中でごそごそ動く薫子の手をしっかり握ってしまうと、薫子が眉を寄せた。
「……佳亮くん、変に思われるよ……」
小声でぼそぼそと、薫子がそんなことを言った。変ってなんでだろう。結構勇気を出したのに、そんなことを言われるとは思わなかった。
「……おかしいですか?」
「……だって、私なんか遠目でみたら、男の人だよ……」
私の方が背が高いし、格好も真っ黒だし……、とは消えそうな声が伝えてきたことだ。
薫子が見た目の事を気にしているのに気づいたのは、佐々木に連れられてお屋敷に行ったときからだった。白いネグリジェを隠そうとしていたし、その後も自分に女らしい形容詞なんて似合わないと言ってみたりして、コンプレックスなのかな、とは思っていた。でも、佳亮にとっては大切な女性だし、そう扱いたくなっても仕方のないことなのだ。
でも本当に薫子が困った顔をしているから、じゃあ、次の街灯まで、と決めて歩いた。街灯は意外と沢山あって、佳亮は直ぐに手を離す羽目になったけど、まあいいかと諦める。薫子が本気で嫌がることをしたいわけではない。ただ、あたたかいおでんと一緒で、そういうコンプレックスは徐々に取り除いてあげられたら良いなとは思った。