料理男子、恋をする
*
兎に角何とか話し合ってみると薫子に伝えて、佳亮は望月の許を訪れていた。薫子の家には及ばないが、望月の家も相当大きな、此方は日本家屋だった。庭には池を配した庭園があり、佳亮はそれを眺めることの出来る応接間で望月を待った。
すっと襖があいて、望月が現れた。望月は着物姿で、佳亮が事前に来訪を告げてあったことを考えると、普段から和装なのだろう、立ち振る舞いが優雅だ。
部屋に入ってきた望月は佳亮の正面に座り、何の用かと訊ねた。
「……僕と望月さんで話さなければいけないことは、一つだけやと思います」
望月は佳亮の言葉を聞くと瞑目して、ひとつため息を吐いた。
「…君は彼女に相応しくない。身を引いてくれないか」
いきなり単刀直入に返されたが、まどろっこしくなくていい。佳亮は望月の目を見て、そういう訳にはいかない、と返答した。
「薫子さんは僕との将来を考えてくれてはりますし、僕も、出来ればご両親に許して頂いていずれ結婚したいと思うてます。僕の事を知らずに相応しくないと断じる前に、話し合いに応じてくれませんか」
佳亮が話し掛けても、望月は首を振るだけだ。またため息を吐いて、こう言った。
「君では、彼女を悲しませるだけなんだ。どうか、引いて欲しい」
どうして佳亮だと薫子を悲しませることになるんだろう。望月の言っている意味が分からなくて、佳亮は問うた。
「なにが貴方にそう言わせているのですか? 婚約の約束の事なら……」
婚約の約束の事なら、もう薫子の気持ちで決着がついている。そう言おうとした時に、違う、と言葉を遮られた。
「君のご両親は、彼女を受け入れないだろう。その時に彼女が傷つくよりも、僕の許に来た方が良いと言っているんだ」
佳亮の両親が薫子を受け入れない? 訳が分からなくて、佳亮は更に問うた。
「貴方は何を理由にそんなことを言わはるんですか? 僕の両親と話したことが?」
もしかして望月と両親が知己だっただろうかと思ったが、違うようだった。
「僕が君のご両親の気持ちを代弁するのは嫌だろう。僕もこれ以上は言わない。……が、彼女を傷つけたくないなら、本当に身を引いてくれ」
理由を明かさず身を引いてくれと言われても受け入れられない。NOを返すと、仕方ないと言って望月が立ち上がった。
「彼女に相応しいのは、彼女を守れる強い男だ。僕と勝負してくれないか」
望月、187センチ。対する佳亮、168センチ。この体格差で物を言うわりに、冗談っぽさが感じられなかった。
兎に角何とか話し合ってみると薫子に伝えて、佳亮は望月の許を訪れていた。薫子の家には及ばないが、望月の家も相当大きな、此方は日本家屋だった。庭には池を配した庭園があり、佳亮はそれを眺めることの出来る応接間で望月を待った。
すっと襖があいて、望月が現れた。望月は着物姿で、佳亮が事前に来訪を告げてあったことを考えると、普段から和装なのだろう、立ち振る舞いが優雅だ。
部屋に入ってきた望月は佳亮の正面に座り、何の用かと訊ねた。
「……僕と望月さんで話さなければいけないことは、一つだけやと思います」
望月は佳亮の言葉を聞くと瞑目して、ひとつため息を吐いた。
「…君は彼女に相応しくない。身を引いてくれないか」
いきなり単刀直入に返されたが、まどろっこしくなくていい。佳亮は望月の目を見て、そういう訳にはいかない、と返答した。
「薫子さんは僕との将来を考えてくれてはりますし、僕も、出来ればご両親に許して頂いていずれ結婚したいと思うてます。僕の事を知らずに相応しくないと断じる前に、話し合いに応じてくれませんか」
佳亮が話し掛けても、望月は首を振るだけだ。またため息を吐いて、こう言った。
「君では、彼女を悲しませるだけなんだ。どうか、引いて欲しい」
どうして佳亮だと薫子を悲しませることになるんだろう。望月の言っている意味が分からなくて、佳亮は問うた。
「なにが貴方にそう言わせているのですか? 婚約の約束の事なら……」
婚約の約束の事なら、もう薫子の気持ちで決着がついている。そう言おうとした時に、違う、と言葉を遮られた。
「君のご両親は、彼女を受け入れないだろう。その時に彼女が傷つくよりも、僕の許に来た方が良いと言っているんだ」
佳亮の両親が薫子を受け入れない? 訳が分からなくて、佳亮は更に問うた。
「貴方は何を理由にそんなことを言わはるんですか? 僕の両親と話したことが?」
もしかして望月と両親が知己だっただろうかと思ったが、違うようだった。
「僕が君のご両親の気持ちを代弁するのは嫌だろう。僕もこれ以上は言わない。……が、彼女を傷つけたくないなら、本当に身を引いてくれ」
理由を明かさず身を引いてくれと言われても受け入れられない。NOを返すと、仕方ないと言って望月が立ち上がった。
「彼女に相応しいのは、彼女を守れる強い男だ。僕と勝負してくれないか」
望月、187センチ。対する佳亮、168センチ。この体格差で物を言うわりに、冗談っぽさが感じられなかった。