料理男子、恋をする




「僕、カッコ悪かったですね」

望月の家から帰る道すがら、佳亮はぼそりとそう言った。男同士の話し合いだからとカッコつけたのに、薫子に仲裁に入って貰うなんて、本当にカッコ悪いったら。

望月を説き伏せる薫子はカッコよかった。どうして佳亮は上手くいかないんだろう。

「佳亮くんが良いのは、そういう所じゃないの」

薫子が微笑みながら並んで歩く。例えば道場に連れてこられて、結果が分かっていても望月の前に立ってくれたことなんか、猪突猛進型の望月が一旦感情を収めるには結果的には良い方に作用した。怒りの感情を持て余したままの望月だったら、薫子も説き伏せられたかどうか、分からない。

「二人三脚って、良く言うじゃない」

微笑って言う薫子に、そうですかね、と佳亮は疑問顔だ。男としては締めるべきところでちゃんと締めたい。

「そうよ。結局は、其処へ行きつくんだと思うわ」

「そうですか……。それなら」

それでも薫子がそう言うから、薫子の隣で一歩、二歩と歩みを繰り返す。

薫子が花が綻ぶように微笑って、朱金の空に染まった道を二人で歩いた。晩御飯、何にしますか? なんて相談しながら-――。


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