料理男子、恋をする
「……んむ。美味い。ばあさんの味とは違うが、さっぱりとしておって食べやすい」
「ほ、本当ですか」
そう言ってもらえるだけで嬉しい。流石に味の再現は出来なかったようだが、それでも好みの味に仕上げられたのは嬉しい。お父さま、と咎める祥子に、お前も食べてみなさい、と宗一が勧めている。祥子がしぶしぶ玉子焼きを食べたのを見届ける。
「ん……。……あら、懐かしい味。子供の頃におかあさまが作ってくださった味だわ」
「うん、この玉子焼き美味しいわ、佳亮くん」
「レンコンハンバーグはビールのつまみにも良さそうだ」
祥子に続いて薫子や樹も手を伸ばす。みんな口々にお弁当を頬張ってくれて嬉しい。窓の外には大きな枝垂れ桜の枝が揺れている。白樺の平田もにこにことその様子を見ているところへ、雄一が口を開いた。
「……さて、お養父さまが良くても、杉山くんのご両親が何と言うか、ですよ。もし薫子を傷付けるようなことを言う方でしたら、そんな人が居る家へ薫子を嫁がせるのは、私は許しませんけどね」
「それは薫子が何とかすることじゃ。儂らが出しゃばる場面じゃないじゃろう」
ほっほ、と宗一が顎髭を撫でた。佳亮は薫子と顔を見合わせることしか出来なかった。