料理男子、恋をする
お味はいかが?(2)
「手っ取り早く、生姜焼きにしようかなと思うんですが」
佳亮は薫子と連れ立ってマンションの近所のスーパーに来ていた。今思うと、薫子が鍋類、食器、料理道具の買い物を配送に頼んでいたのは正解だった。あんな嵩張るものを持って、夕方のスーパーでなんて買い物できない。
佳亮の提案に、薫子は満面の笑みで、良いね! と親指を立てて賛同してくれた。
「鶏肉で作ると、温めなおしてもそれなりに食べれるんで」
「あっ、豚肉じゃないんだ! 鶏肉の生姜焼きはコンビニ弁当では食べないわね…」
「豚肉はレンジで温めなおすと固くなりそうなので」
よっぽど分厚い肉を使えば違うかもしれないが、スーパーで買える生姜焼き用の肉ではやはり温めなおしたときに固くなると思う。だから厚みのある鶏肉を調理するのが良いと思った。
「味付けは普通の生姜焼きと変わらないんで。あとはスープとかサラダとか作りましょう」
「すごいすごい、豪華~」
籠を持つ横で薫子がぱちぱちと手をたたく。こんな風に喜んでもらえると作り甲斐があるというものだ。
手早く材料を籠の中に入れていく。鶏肉、玉ねぎは生姜焼きの材料。そしてサラダとスープとして、大根と水菜とベビーリーフにプチトマトとジャガイモ。醤油にみりん、料理酒も忘れずに。調味料は何一つないから全部買う。台所が小さくてキャビネットも買ってないのは確認済みなので、調味料は取り敢えず一番小さなものを揃えた。これなら冷蔵庫に入れておける。