料理男子、恋をする
「僕の料理、食べてくれるじゃないですか」
何時も恋人たちに嫌がられていた手料理。それを喜んで食べてくれたのは薫子が初めてだ。
「そんな……。でも、じゃあ、どうやって、ご飯のお礼をしたらいいのか、分からないわ……」
「良いんですよ、お礼なんて」
佳亮は微笑んで言った。最初は腕を買う、なんて言われたけれど、実際作り始めたら人の為の料理作りがこんなに楽しいんだって思い出した。それだけで十分すぎるお礼だ。
「困るわ……。そんなこと言われたら、私、本当に、どうしたらいいのか分からない……」
心底困ったように薫子が言うから、じゃあ、こうしましょう、と佳亮は提案した。
「料理が美味しかった時は、僕にコーヒーをご馳走してください。コンビニの缶コーヒーで構いません。僕はお酒をあまり飲まへんし、コーヒーは好きです。それに、薫子さんやってコンビニへ行くのは好きでしょう?」
佳亮が言うと、薫子は呆けたような顔をした、ぽつりと呟いた。
「そんなことで、良いのかしら……」
「良いんですよ。僕が、薫子さんに料理を作ってあげたいだけなので、本当ならお礼なんて要らないんです」
そう言ってもう一度佳亮が微笑むと、漸く薫子も少し困ったように微笑んでくれた……。