料理男子、恋をする

薫子がそう言って佳亮がオムライスをスプーンで掬うのを止めた。

…仕上げてない?

目の前のオムライスは焦げはあるものの、赤いケチャップライスを黄色い卵で包んであって、完璧にオムライスの形をしている。何が足りないというのだろう。

疑問に思っていたら、薫子がケチャップを手に持って、テーブルに乗り出してきた。…容器からケチャップが垂れる。

「……っ、………」

「………、………っ」

薫子が、オムライスの上にケチャップで不器用に…ハートマークを描き上げた。まさか、そんなものを描くとは思っていなくて、佳亮は驚いてしまう。

「か…っ、……かおるこさん……?」

佳亮がオムライスから視線を上げて薫子を見ると、泣きそうな目になって歯を食いしばった薫子が口を開いた。

「好きです……っ」
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