料理男子、恋をする
「ランボルギーニ…? 兄のことかしら…」

あに…? お兄さん……?

「お…っ、お兄さんとキスしたりするんですかっ!?」

「するわ。家族ならするものじゃないの?」

急転直下。まさかの展開。恋人だと思っていた人が兄だっただなんて。ブルジョワの生活習慣に佳亮は頭を抱えた。

あんなに悩んだのに!

そう訴えたかったけど、薫子が項垂れた佳亮を心配そうに見てきたから、それも出来ない。

「それで…、…彼女の居る佳亮くんに聞くのは、変かもしれないけれど…、佳亮くんは、私のことを、どう思っているのか、…聞いても良いのかしら……」

言葉尻こそ控えめだが、目がキラキラしている。佳亮に彼女が居ると言いつつ、これは確信しているな。そうだとも! 惚れているとも!

「この展開で、言わなきゃ分かりませんかね?」

嫌味っぽく言ってみると、薫子はそうよ、とそっけなく返した。

「大事なことは、言葉にしないと伝わらないわ」

だから私は言葉にしたのよ。

そう言って佳亮の言葉を待っている。悔しいけれど、惚れた弱みだ。どう伝えれば満足するだろうかと考えを巡らせて、目の前に差し出されたオムライスをひと口食べると、それを見守っていた薫子の耳元に口を寄せて囁いた。


「…世界で一番美味しいオムライスですよ」



そっと顔を離すと、ぱちりと瞬きをして、そして佳亮の顔を見て花が綻ぶように微笑む薫子。

やれやれ、この先大変だなあと思ったけど、幸福感の方が断然勝(まさ)った。



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