料理男子、恋をする
紅葉狩り当日。佳亮は昨日から仕込んでおいた弁当を持って急いで部屋を出た。薫子がもう玄関前に車を着けていると連絡してきたからだった。エントランスを出ると、運転席から薫子が降りてきた。…驚いた。何時もと様子が全然違う。
薫子は深い紫のワンピースを着ていた。カシュクール風で胸元にレースが施されている。スカートはフレアーで薫子の細くてきれいな脚をよりきれいに見せていた。
「……び…、…っくりしました…。薫子さん、スカート持ってはったんですね…」
この前食事を作りに行ったときにラックには何時も通りパンツスーツしか掛かってなかった。もし佳亮の為に着てくれたのだったら嬉しい。
佳亮の視線の先で、薫子がもじもじしている。似合うかと小声で問われたので、似合いますと即答した。ほっとした薫子を見て、やっぱり今日の為に着てくれたんだと分かる。
「素敵です…。…上手に言えませんけど、とても似合ってます」
「……ありがとう…」
マンションの玄関先でなんて可愛い笑みを見せるんだろう。どきどきしてしまって落ち着かない。佳亮は行きますか、と声を掛けて手に持っていた弁当を掲げた。
「張り切って作りました。あとで食べましょうね」
料理の話になって、薫子がちょっと安心したように肩の力を抜いた。
「そうね、楽しみ! さあ、乗って」
薫子に促されて助手席に乗る。そういえばこの車に乗せてもらうのも初めてだ。