料理男子、恋をする

「佳亮くんも飲めたら良いのにね。そしたら二人で酔っぱらえるのに…」

「でも僕が酔っぱらったら、後片付け困りますよ? あんまり遅い時間までお邪魔するのもどうかと思いますし」

正論で応えると、うう~ん、と薫子が思案顔をした。

「あっ、じゃあ、私が酔いがさめてから片付けるとか」

「お皿が勿体ないので、是非しないで下さい」

なにそれ、と笑うが、薫子の不器用加減は相当なので、本当にお皿が割れてしまったら困るし、割れた破片で怪我でもされたらもっと困る。そういう訳で、佳亮が片づけをした方が何倍も良いのだ。

「まあ、僕の事は気にせず、薫子さんは美味しいご飯を食べてくれたらいいですから」

「なんだか申し訳ないわ」

「最初っから、そう言う約束やないですか」

笑うと、そうなんだけど、と苦笑気味だ。

今は共働きの家庭も増えて、男女の間で家事の負担も昔とは変わってきている時代だ。そんな中、男が片づけをしたって良いじゃないか。人には向き不向きがあるし、佳亮はそう捉えている。薫子はまだ悩んでいたが、まあまあ、と宥めて家に帰った。

< 73 / 125 >

この作品をシェア

pagetop