料理男子、恋をする
「佳亮くんも飲めたら良いのにね。そしたら二人で酔っぱらえるのに…」
「でも僕が酔っぱらったら、後片付け困りますよ? あんまり遅い時間までお邪魔するのもどうかと思いますし」
正論で応えると、うう~ん、と薫子が思案顔をした。
「あっ、じゃあ、私が酔いがさめてから片付けるとか」
「お皿が勿体ないので、是非しないで下さい」
なにそれ、と笑うが、薫子の不器用加減は相当なので、本当にお皿が割れてしまったら困るし、割れた破片で怪我でもされたらもっと困る。そういう訳で、佳亮が片づけをした方が何倍も良いのだ。
「まあ、僕の事は気にせず、薫子さんは美味しいご飯を食べてくれたらいいですから」
「なんだか申し訳ないわ」
「最初っから、そう言う約束やないですか」
笑うと、そうなんだけど、と苦笑気味だ。
今は共働きの家庭も増えて、男女の間で家事の負担も昔とは変わってきている時代だ。そんな中、男が片づけをしたって良いじゃないか。人には向き不向きがあるし、佳亮はそう捉えている。薫子はまだ悩んでいたが、まあまあ、と宥めて家に帰った。