料理男子、恋をする


土鍋がないので、佳亮の家から土鍋を持ってきた。雰囲気が出る、と薫子は大喜びだ。

野菜をそれぞれ切った後で鶏団子を作る。出し汁を作って鶏団子を先に、それから野菜を入れると、部屋の中は暖房も点けないのにあたたかくなった。

「暖房の代わりにもなるのね。凄い、エコだわ」

「換気はしましょうね」

狭い部屋だから気をつけないと。鶏団子が煮えて出来上がりだ。団子と野菜を取り分けていただく。

「ん、わ~、さっぱりしてる! これ、幾らでも食べられそうよ! 日本酒、合うわあ」

「それは良かったです。沢山作ったので、沢山食べて下さいね」

取り分け皿が空になったのを受け取って、お替わりをよそう。すだちの香りが食欲をそそるようで、薫子の食が進んでいて嬉しい。

「あ~、やっぱり佳亮くんと一緒に飲みたい! 飲めたら良いのにね~」

きゅっとお猪口を空けて薫子が言う。酒飲みは皆言うんだよな。でも、飲むと気持ち悪いだけなので、その辺は気にしないで欲しい。

「アレルギーやと思て、諦めて下さい。気持ち悪くなるだけなんで」

「うう~ん…。一緒にご飯食べてるのに、一緒に飲めないのは寂しいわ…」

「すみません、そればっかりは勘弁してください。あ、鶏団子、お替わりどうですか?」

貰うわ、とお皿を受け取る。さっぱりとした味に食時とお酒が進むようで、鍋と日本酒はあっという間に空になった。後片付けまで終えて、佳亮は土鍋を抱えて家に帰った。


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