料理男子、恋をする

「じゃあ、行きましょうか」

薫子がヒールを履くから余計に佳亮との身長差が付く。でもこのワンピースにペタンコなパンプスは似合わない。薫子は自分で分からないと言いつつ、自分の見せ方をよく知っていると思った。

会場のレストランは繁華街の一角で店の入り口の奥で受付係の織畑が佐倉と一緒に参加者一人一人にビンゴのカードを配っていた。

「あ、杉山くん。大瀧さんも」

朗らかに呼び掛けてくれて、隣を歩いてきた薫子がほっと息と着いたのが分かった。やっぱりアウェイな場所だから緊張するんだろうな。他愛ない世間話をしながら歩いてきたけど、あまり役には立たなかったみたいだ。

受付でビンゴカードを受け取る際に、薫子が織畑と言葉を交わしていた。

「来てくれてありがとう。楽しんで行ってね」

「はるかさんにお会いできてうれしいです。またあとでお話してください」

織畑は大丈夫よ、と言うように薫子の手に触れた。薫子の表情が緩んだのを見て、やっぱりはるかの言う通りに連れて来て良かったと思った。

クリスマス会はビュッフェ式だったので、佳亮と薫子は各々好きな食べ物を持ち寄った。佳亮が作る食事は基本家庭料理なので、こういう店で出してもらう料理も作れることは作れるがやはり店で食べたほうが美味しい。薫子も料理を美味しそうに食べていて、たまにはこんな食事も良いわね、と言っていた。

「薫子さんのおうちのご飯には敵わないと思いますが、作ろうと思ったら作れますよ。リクエストがあったら言ってください」

佳亮が言うと薫子は微笑んだ。

「私、佳亮くんの作ってくれるお料理好きよ。やさしい味がするわ」

料理を褒められるのは嬉しい。薫子に気に入ってもらえているのなら猶更だ。
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