料理男子、恋をする
「私、辛い物も平気だから、これは当たっても大丈夫だわ」
薫子が笑ってそう言った。そう言えば韓国料理は出したことがなかったな。今度チゲ鍋でもしてみようか。この前の鶏団子鍋と同様、あたたまって良い気がする。そう薫子に提案すると、楽しみだわ、と嬉しそうな笑みが返ってきた。
大きな音で音楽が鳴る中、ショットグラスが全員に行き渡る。進行役が「メリークリスマース!」と掛け声をかけて、皆で一斉にグラスの中身を飲んだ。佳亮もごくっと飲み込……もうとしてむせた。
「かっら!!」
当たりだったのだ。隣で薫子が笑っている。
「げほ……っ! ごほん、ごほん!」
むせている佳亮に薫子が水の入ったグラスと紙ナプキンを取ってくれる。ありがとうございます、と涙目で受け取ると、薫子が笑った。
「佳亮くん、チゲ鍋、大丈夫?」
ひりひりした口の中を水で潤しながら、ハバネロは飲むものじゃないので、と辛うじて返した。
「そうね。でも佳亮くんがそんなに辛いなら、グラスを変えてあげればよかった」
「まあ、そういうゲームなので……」
先に食事をしておいてよかった。この舌のひりつきでは、この後何も食べられない。
「佳亮くん、甘いものはどう? 少しは辛いのと中和されないかな?」
ハバネロの辛さにやられて舌に刺激を与えたくない。とろっと蕩けそうなものと思って、はちみつヨーグルトをもらうことにした。薫子は色とりどりにトッピングされたカップケーキやチーズケーキを持ってくる。織畑も一緒にこちらに来ていた。