料理男子、恋をする
「カットケーキで申し訳ないんですけど。薫子さん、栗好きでしょう」
「嬉しいわ。雰囲気楽しめるもの」
インスタントコーヒーを淹れ、ケーキと一緒に出した。薫子用にはモンブランだ。
薫子がマグカップを手にする前に、佳亮は鞄からある包みを取り出した。
「あの、薫子さん。本当はちゃんとしたお店で渡したかったんですけど……」
そう言ってリボンのついた小さな箱を薫子の前に差し出す。薫子はぱちりと瞬きをして、佳亮を見た。
「……やだ。私全然何も用意してないわ」
「気にしないでください。僕が、あの、あげたかっただけなので……」
開けても良いの? と聞く薫子に、是非、と応えた。薫子がリボンを解き小箱を開けると、中にはタンザナイトの一粒イヤリングが入っていた。色々考えたのだが、冬に凛と立つ薫子の顔立ちを思うと透明な寒色の方が良いかと思ったのだ。
「わ、素敵」
「そうですか? 良かった。薫子さんが欲しいものって分からなくて。でもアクセサリーなら持っていても損じゃないかなと思って」
「着けてみても良い?」
「是非」