料理男子、恋をする
薫子が鏡を取り出してイヤリングを着ける。鏡を見て満足そうに微笑う様子に安心した。
「素敵ね。私、あんまりアクセサリーって着けないんだけど、会社に着けて行っても良いかしら」
「もう薫子さんのものなので、自由に着けてください」
にこりと笑うと、薫子も嬉しそうに微笑った。
「……実は、本当はですね……」
佳亮は薫子に種明かしをする。
「今日、お店を予約してたんです。……クリスマスイブだからと思って」
ぱちりと、もう一度薫子が瞬きをする。
「でもこの前薫子さん、自分のことを『看板』って言わはったでしょう? あれがどうしても気になってもうて……。……僕は、先刻みたいに僕の作った料理を美味しいって言うて一緒に食べてくれる薫子さんを好きになったので……、……それはこれからも変わらないってお伝えしたくて、お店はキャンセルしました」
「……、…………」
佳亮は言葉を継いだ。
「僕にとって、薫子さんは薫子さんなので……。おうちとのことはこれからどうにかしなきゃいけないことですけど、それが理由で好きになったわけでも嫌いになるわけでもないです。……今日はそれをお伝えしたくて……。……すみません、本当ならあの時にそう言えたらよかったんですけど、あの時は僕もちょっと衝撃が大きかったので……」
佳亮が言うと、薫子は首を振った。