春子先輩と僕。
*
ほんの1時間前に別れたばかりなのに、もう春子先輩に会いたくなってる。
重症だな…
「凪、」
「おい、凪」
うるさ。無視しよ。
「おいお前いい加減にしろよ聞こえてんだろ?」
そろそろ怒られそうだから返事してやるよ。
「遼、僕になんの用」
僕がそう言うと、遼はあからさまに顔を歪める。
…言おうとしてることは分かる。
「うわー、その口調は彼女といる時専用だろ?気持ち悪ぃから俺に使うなよ」
やっぱり、な。
僕が自分のことを僕と呼ぶのは、春子先輩といる時だけ。
…実際にはそうじゃないんだけど、僕が春子先輩といる時だけ一人称を変えるから、そう思われてるっぽい。
まぁ説明するのもダルいから、そのままにしておくけど。
「うるさいな、だから何」
「いや、」
そこで言葉を止めて何か言いたげな瞳でこっちを見てくる。
あー、そういうこと。
「行ってくる」
「おー、お前、お手柔らかにしてやれよ」
「は?めんどい」
教室の外に出ると、甘えたように僕を見上げてくる女子。
いつもの事。