春子先輩と僕。
「…」
何も言わず、ただ時が過ぎるのを待つように。
こういうのは実はもう5回目くらい。
さすがに耐えられないよ、ごめん。
「もう無理だよ。春子先輩の気持ちがわかんない。ごめん、今日は帰ってほしい」
「えっ、真緒くんっ、。ごめん。帰りたくないよ…」
知ってるよそんなこと。
春子先輩も僕も、一人暮らし。
でも僕の親は単身赴任中なだけで、春子先輩の親は、2年前に他界してる。
だから、春子先輩は両親との思い出が詰まったあの家に帰りたくないんだって、いつか言ってた。
僕の家に来たいのか、僕の家を逃げ場にしているだけなのか、今の春子先輩を見てるとわかんなくなっちゃうよ。
ごめんね、僕の心が広かったら、こんなの笑って許せるのかもしれないけど。
…春子先輩のことが好き過ぎて、付き合う前より心狭くなってるよ。多分ね。
「ごめん、1人にして欲しい」
僕がもう1度頼むと、春子先輩は諦めたように、
「わかった、よ。じゃあね」
そう言い残して部屋を出ていった。