最後の悪夢
「俺行けない」
「……。マジで?」
さすがに無神経じゃないか、と思ったのは私だけではない。
シオンも名木田も言葉を失った。きっぱりと、凛上が、言いきったからだった。
「イツキのこと助けたくないのかよ?」
「助けたいよ」
凛上が頭を抱えた。
彼も彼で悩んでいるのだろう。
ホールの中は怖いぐらいに静かだ。
高い天井からシャンデリアの照らすレッドカーペット。フロントの受付の女性が二人。でも、妙なことだけど、ホテルに来てからずっと私達のことは特に気にしていなさそう。
鬼が来るかちらちらと横目に気にしてはいるが辺りからはその気配はしない。
むしろ目の前の扉からいつ鬼が出てくるかばかり考えてしまって、気が気じゃなかった。