最後の悪夢
なんて駆け引きみたいなことを考える自分が嫌になる。
私はそれだけ話すと凛上をかわして一人で歩き始めた。
寂しい。
悲しい。
でも贅沢なんてできない。
こんな状況で恋するなんてどうかしている。
私はもっと緊張感をもたないと。
凛上だって今は、恋愛どころじゃないはずなのに。じゃあなんで思わせ振りなこと言うの?
一緒に来てほしいよ。
でもそれ言っちゃったら私、凛上のことが好きだってバレてしまうじゃんか。
そしたら凛上は、今までみたいに友達だったように、優しく私に接してくれる? 幻滅して離れていくんじゃないの。今よりもっと、面倒くさいやつだって思われそう。
遠い海を眺めながら宛もなく進んでいく。
そうしてホテルから伸びる光が届かなくなってきたところまで歩いた時、突然、キャリーケースを持つ手に力が入らなくなった。