最後の悪夢
死んだら走れなくなるからそれと同じだって。でもんなことはなかったんだ。走れなくなって死んだ試しがないから。
まだ生きているから大丈夫だなんて自分勝手な理論を旭は突きつけてきた。けれどもあながち間違いではない。
「いいよ、走ろう」
俺は笑った。
もうどうなってもいい。
ケジメをつけるのは下手くそだし、心に決めたところでやめられるほど軽くはない。
俺の足は俺が走るためにあると思っていた。走ることに全てを捧げた人間が俺なのだと思っていた。
でも突然それを否定するように体が言うことをきかなくなった。
この苦しみが紛れるのならそれでいい。俺は今を生きているんだ。
だから、今だけは、幸せになりたい。