最後の悪夢
私は余計なことをよく言う。
愚痴は嫌だと否定したら凛上のことを、傷つけるかもしれないって思ったけど。これはこれで嫌な思いをさせたかも。
「でも、走るのかっこよかったね。楽しそうだった」
「ん、よかった」
凛上の表情が少し明るくなった。
私は頷いて、前を向いた。
少し、複雑な気持ちだった。
凛上のことで頭がいっぱいだった。なんて言えばいいんだろう。
傷つけたくない。泣かないでほしい。笑っていてほしい。探り合いなんて嫌だ。私には関係ないなんて嫌だ。隣にいたい。そばにいたい。支えるなんておこがましいかもしれない。
それでもこんなに、こんなにも、この人を大切にしたいと思う気持ちが溢れてくる。
それから旅館に着くまで、二人ともなにも話さなかった。
それでも私は幸せだったから。