【番】小動物な後輩君の愛が深すぎる
数十秒後──ようやくくすぐりから解放された。


家に誰もいなくて良かった……。

透瑠ママがいたら、「何やってるの⁉」って叫んで、急いで部屋に入ってきてただろうし。



「ホッとするのはまだ早いですよ」

「えっ?」



ふぅ、と一息ついていると、両肩を掴まれ、グイッと体を正面に向けられた。



「たった数十秒間くすぐっただけで終わると思ったんですか?」

「それは……」

「俺が負けず嫌いなの知ってるでしょ?」

「ちょっ……何するの!」



透瑠くんは不敵な笑みを浮かべ、ブラウスのリボンを引っ張った。

咄嗟に引っ張る手を両手で押さえるも。


肩にあったもう片方の手が、再び脇腹を擦った。



「っ……」

「じゃあ、またくすぐろうかな」

「それはやめて……!」



脇腹にある手を片手で押さえ、目をかっ開いて必死に訴える。

急にどうしたの……⁉
確か去年も突然キャラ変わってたよね⁉

負けず嫌いスイッチを押したらこんなに変わるわけ⁉



「くすぐられたくないんなら、手どけて」

「……っ、」



勝ち誇ったように口角を上げた透瑠くん。

片手だけじゃ力敵わないって知ってて……!
この卑怯者……っ!
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