赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
第1章

快楽の新月

2年生に進級して1ヶ月。
新学期の慌ただしさが落ち着いた5月の中旬。



「起立、礼」



放課後を告げるチャイムが校内に鳴り響き、帰りのホームルームが終わりを迎えた。


一斉に前方のドアへ向かうクラスメイト達。

そんな彼らとは逆に、私、雨村 風花は後方のドアから教室を出た。


同い年の生徒達とすれ違いながら廊下を歩く。すると、後ろからポンと肩を叩かれた。



「よっ、風花」

「あっ、千冬(ちふゆ)!」



低い声で名前を呼んだのは、幼稚園からの幼なじみの鳥越(とりごえ) 千冬。

名前の通り、小鳥のように可愛らしい顔立ちと、サラサラの茶髪が特徴の男の子。

隣のクラスだけど、家が近いからよく一緒に登下校しているの。



「千冬も今から図書室に行くの?」

「うん。今日新刊の日だから」

「私も。リクエストしたの入ってるかな~?」



この学校の図書室は、毎月新月の日に新しい本が入る。

専門書や図鑑、雑誌、小説、漫画など。その数なんと100冊以上!
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