赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―


真面目な内容だからってのもあるのだけれど、潤くんにはまだ、私が血液Fランクだと教えていない。

だからこそ、時間をかけて丁寧に説明したいんだ。



†††



「来てくれてありがとうございます。よろしくお願いします」

「こちらこそ……よろしくお願いします」



いつ話そうか考えていたら、あっという間に沢村先輩との約束の日がやってきた。

一昨日と同じ席に座り、膝の上で握り拳を作る。


なんだか手汗かいてきた……。



「リラックスして大丈夫ですよ。何か音楽でもかけます? クラシックとか」

「いえっ! 無音で大丈夫です!」



間髪を入れずに断った。

気遣いはありがたいけど、クラシックなんてかけたらそれこそ病院みたいだし……!

余計緊張するに決まってる……!



「これは失礼しました。それでは始めていきますね」

「はいっ」



背筋を伸ばして深呼吸をした、午後4時5分。
保健室にてカウンセリングが始まった。
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