赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―


ギクシャクしてからは顔を合わせづらくなって……卒業式に千冬と一緒に別れの挨拶をするまで、まともに話すことができなかったっけ。


原因はお互いにあるんだけど、なかなか向き合うことができず……。

鉢合わせしたらすぐ目を逸らして、まるで磁石みたいに避け合っていた。



「幼なじみはダメージが大きいですね……。その様子だと、かなり酷かったんですか?」

「……はい。それが原因で、男の人が苦手と感じるようになりました」



これが男性恐怖症を患ったきっかけ。

翼との一件により、男の人の考えていることがわからなくなってしまったんだ。



「それは大変でしたね……。今もその幼なじみに対して後悔の念がある感じですか?」

「はい。ちゃんと話を聞いていたら、ここまで酷くはならなかったと思います。今はまだ会う勇気はないんですけど……いずれは和解したいなと……」



感情が込みあげてきて言葉を詰まらせる。


ずっと一緒にいたのに、傍にいたのに。

私は、彼が抱えていたものに気づけなかった。
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