赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
「さっきの人、3年生の人だよな? しかも家が病院で超エリートって噂の」
「えっ! 知ってるの⁉」
「一応。沢村先輩だっけ。知り合いなの?」
無表情で迫られ、視線を逸らす。
実験で頭がいっぱいの千冬でさえも知っていたなんて。どれだけ私は情報に疎いんだ。
って、今はそんなこと考えてる場合じゃない。
男子が苦手なはずの私が、保健室で面識のない男の先輩と2人で話していた。
さて、この理由をどう説明しようか……。
「ただいま〜! 鳥越くんごめんね! すぐ処置するから!」
頭を捻らせていると、タイミング良く保健室の先生が戻ってきた。
ホッ、助かった。
「では雨村さん、次はテストが終わってからにしましょうか」
「あっ、はいっ」
先生に処置してもらっている千冬を眺めながら、沢村先輩と次の予定を決めた。
日付は、期末テスト最終日の金曜日。
時間は放課後で、場所は中庭にあるベンチ。
梅雨真っ只中だけど、天気が良くなるようお願いしておこう。