赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―

娘の無事を確認した母は、父に連絡をしに病室を出ていった。



「良かった……。死んだかと思った」

「わぁっ、ちょっと！」



2人きりなのをいいことに、千冬は私のお腹の上に頭を乗せてきた。


お母さんはともかく、普段落ち着いている千冬がこんなに焦っているなんて。しかも少し顔青白いし。


私、そんなに重体だったの……？　まさか、寝てる間に手術した⁉

だってこの点滴、どう見ても血の色だし。
大量出血したから輸血しているんじゃ……。



「ね、ねぇ、私、手術したの？」

「違うよ。1週間前に図書室に忘れ物取り行って、そこで吸血鬼に血をあげただろう？　その時、血を吸われ過ぎて気を失ったんだ」



思い出した。あの吸血鬼くん、餓死寸前だったから血を分けてあげたんだった。

少しだけって言われたけど、めちゃめちゃ吸われたっけ。



「ん？ 今1週間って言わなかった？ 昨日とかの話じゃなくて？」

「昨日じゃない。あの後病院に運ばれて、風花はここで丸1週間眠ってたんだよ」