赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
えっ……? 鋭いって、どういう……。



「頭も顔もスタイルも良くて、家はお金持ちで人望もあって。おまけに将来も約束されてて。かっこいいなぁ、羨ましいなぁって思ったよ」



いつもの柔らかな笑顔から、羨望の気持ちが次々と吐き出されていく。

まさか図星だったとは……。

確かに全方位完璧な人だけど、潤くんも負けてないと思うけどなぁ。



「潤くんも嫉妬することあるんだね。いつも落ち着いてるから全然イメージなかった」

「それ友達からもよく言われたなぁ。でも俺だって妬くことくらいあるよ。ただ……」



──プルルルルル……。


すると、潤くんのスマホに電話がかかってきた。



「はいもしもし。うん、今帰ってるとこ」



立ち止まって電話に出た潤くん。

話し方からすると、おじいちゃんかおばあちゃんのようだ。



「はーい、了解しました。ごめん、おばあちゃんに買い物の荷物運び頼まれたから先に帰るね」

「わかった。あ、今日の吸血はどうする?」

「あー、今日はいいや。週末も色々お手伝い頼まれてるし、吸血は来週にする」



早口で言い残すと、自転車に乗って急いで帰っていった。

忙しそうだなぁ。
寂しいけど、やっとおじいちゃんの腰が治ってきた今、無理はさせられないよね。


ちょっぴり残念と思いながら、祖父母思いな彼の背中を見送った。
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