赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―

行きたかったって言ってるけど、行ったら逆に嫉妬心湧き上がりそうだけどなぁ。

さりげなくエスコートしてくれたし、店員さんにも腰が低かったし。

食べ方も綺麗だったから、行かなくて正解だったと思う。



「……あ、そういえば潤くん、先週……」

『まもなく、〇〇、〇〇〜。お降りの方は──』



口を開いたタイミングで、運転手さんのアナウンスが流れた。



「ん? 何?」

「ううん。なんでもない」



沢村先輩との雑談会を振り返っていたら、ふと思い出した。


先週の帰り際、潤くん、何か言いかけてたっけ。


気にはなっていたんだけど、何も連絡がなかったから、大したことじゃないんだなと思ってスルーしてたんだった。

お手伝いで忙しかったから話す暇がなかっただけなのかもしれないけど。

勉強会が終わったら聞いてみよう。



──十数分後、最寄りのバス停に到着した。


図書館に入った私達は、本棚に目もくれず、真っ直ぐ自習スペースへ。

奥の席に座り、気乗りしない数学の宿題を始めた。


わけなのだけど……。



「風花、大丈夫?」

「うぅー……文字が変に見える」



数学の教科書とずっとにらめっこしていたら、公式のアルファベットが不気味な形に見えてきた。

Xってこんな形だったっけ……。
うぅっ、これじゃ問題解けないよ……。
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