赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
「お久しぶりです」と律儀に頭を下げた潤くん。
先輩……前の学校の先輩かな?
っていうか、今、下の名前で呼ばなかった……?
「会えて嬉しい〜……って、あら? お友達? もしかして彼女?」
「あっ……」
眺めていると、目の前にきて顔をまじまじと覗き込んできた。
巻かれた艶のある黒い毛髪に、プルプルの赤い唇、鼻腔をくすぐる甘い香水の匂い。
そして、出るところは出たメリハリのある体型。
もしかして……。
「初めまして。夜城くんの“ハジメテ”をもらった沙弥香です。よろしくね」
至近距離でクスッと笑った彼女に、心臓がドクンと嫌な音を立てた。
それってつまり、親密な関係だったってこと……?
信じたくないけど、見るからに大人の色気と余裕が漂ってて、潤くんの好みど真ん中。
それにさっき下の名前で呼んでたし、やっぱり……。
「その言い方やめてくれませんか? あと、その作り笑いで嘘を吐かないでください」