赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
わかりやすく動揺していたら、潤くんが私を守るように彼女の前に立ってくれた。
声のトーンもハッキリしていて、どことなく怒りを感じる。
「1度吸血させてもらっただけなのに大袈裟です。それに、本当は嬉しいなんて思ってないでしょう?」
吸血……? 潤くんはこの人の血を飲んだってこと……?
ハジメテって、まさか……。
「誤解を招くようなこと言わないでください」
「…………チッ。本当変わってねーな」
彼の背中で隔てられた向こう側から、先ほどの明るい声とは打って変わった恐ろしい声が聞こえ、身を震わせた。
その瞬間──。
「うっ……!」
「っ! 潤くん……っ!」
急いで立ち上がり、バランスを崩してふらつく彼を支える。
「……調子乗んなよ、味覚バカが」
鋭い目つきで潤くんを睨みつける彼女。
その口元には──唇の色と同じくらい、鮮明な赤い血が。
今、首に噛みついた⁉ この人も吸血鬼なの……⁉