赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
英語の単語を写し終えたタイミングで母に呼ばれた。
もー、今から和訳写そうと思ったのに。
内心文句を垂れながら1階に下り、リビングのドアを開ける。
「お、風花ちゃん! 久しぶり!」
「あら〜! 大きくなったね~!」
目に飛び込んできたのは、椅子に座って手招きしている、両親と同年代らしきおじさんとおばさん。
と──1週間前に会った、黒髪の吸血鬼くん。
「風花、突っ立ってないでこっちに来なさい」
母に促され、父、母、私の順で、吸血鬼の彼と顔を合わせるように着席。
図書室では薄暗くてよく見えなかった顔がハッキリ確認できた。
あの時は点滅してた瞳とまつ毛にしか目がいかなかったけど……この人、よく見たら整った顔してる。
凛々しい雰囲気で、お堅い美少年って感じ。
髪の毛もすごく綺麗。
私も同じ黒髪なのに、彼の毛は艶々で天使の輪が輝いている。
「風花ちゃん、おばちゃんのこと覚えてる?」
「へっ?」